冷蔵車・冷凍車トラックは、食品や医薬品、化学製品などの温度管理が必要な貨物を輸送するための特殊車両です。車両内部に冷却装置を備え、一定の温度を維持することで、輸送中の品質を保つ役割を果たします。
冷蔵車は主に生鮮食品や飲料などを運ぶために使用され、温度帯は0℃~10℃程度に設定されます。一方、冷凍車はアイスクリームや冷凍食品など、より低温の管理が必要な貨物向けで、-20℃以下の環境を維持できます。
冷蔵・冷凍車トラックは、スーパーマーケットや飲食店、医薬品業界、物流会社など幅広い業界で活用され、安定した供給チェーンを支えています。
冷蔵車・冷凍車の構造
冷蔵・冷凍車は一般的なトラックと異なり、特殊な構造と冷却装置を備えています。主な構造は以下の通りです。
(1) 車両本体(ボディ)
トラックの荷台部分は、断熱性の高い特殊なパネルで覆われています。発泡ポリウレタンや真空断熱パネルを使用し、外部の温度の影響を受けにくくしています。
(2) 冷却装置
車両の前方または上部に冷却ユニットが取り付けられ、荷室内の温度を一定に保ちます。冷却方式には以下の種類があります。
直結式:エンジンと連動して冷却装置を稼働させる方式。小型~中型車両でよく使用される。
独立式:冷却装置専用のエンジンを搭載し、エンジン停止時でも冷却が可能。長距離輸送に適している。
(3) 床面構造
荷室の床は、冷気の循環を助けるためにアルミ製のスノコ状構造になっていることが多く、温度を均一に保つ工夫がされています。
(4) 扉・密閉構造
冷気が逃げないように、荷室の扉には強力なシールが施されており、開閉時の温度変化を最小限に抑える設計になっています。
冷蔵車・冷凍車の温度帯
冷蔵・冷凍車は、輸送する貨物に応じて適切な温度設定が求められます。温度帯は大きく3つに分類されます。
(1) 冷蔵タイプ(+5℃~+10℃)
・生鮮食品(野菜・果物・乳製品・飲料)
・薬品や化学製品
・チョコレートや洋菓子
(2) チルドタイプ(0℃~+5℃)
・肉・魚・生鮮食品
・加工食品(ハム・ソーセージなど)
(3) 冷凍タイプ(-20℃以下)
・アイスクリーム
・冷凍食品
・急速冷凍された肉・魚
また、二層式冷蔵車という、荷室内を仕切って異なる温度帯を設定できるトラックもあり、異なる温度管理が必要な貨物を同時に輸送できます。
冷蔵車・冷凍車の種類
用途に応じて、さまざまなタイプの冷蔵・冷凍車があります。
(1) 小型冷蔵・冷凍車(軽トラック・2tトラック)
・スーパーマーケットや飲食店への配送向け
・近距離輸送や少量の荷物の運搬に適している
(2) 中型冷蔵・冷凍車(4tトラック)
・市場や物流センターから小売店への配送向け
・多くの店舗へのルート配送に利用される
(3) 大型冷蔵・冷凍車(10tトラック)
・長距離輸送や大量輸送向け
・物流センター間の輸送に使用される
(4) トレーラータイプ
・大規模な物流拠点間での輸送向け
・コンテナ単位での冷凍・冷蔵輸送が可能
冷蔵車・冷凍車のメリット
(1) 温度管理の徹底
貨物の品質を維持するため、一定の温度を保ちながら輸送できる。特に食品や医薬品などの品質管理が重要な業界では必須。
(2) 多様な輸送ニーズに対応
冷蔵・冷凍・チルドなど、さまざまな温度帯での輸送が可能。二層式の車両を使えば、異なる温度帯の貨物を同時に運ぶこともできる。
(3) 食品ロスの削減
適切な温度管理を行うことで、食品の劣化を防ぎ、廃棄ロスを削減できる。
(4) 長距離輸送が可能
独立式冷却装置を搭載した車両を使えば、長時間・長距離輸送でも安定した温度を維持できる。
冷蔵車・冷凍車の課題
(1) 燃料消費が多い
冷却装置を稼働させるため、通常のトラックよりも燃料消費が多くなる。そのため、燃費対策や省エネ技術の導入が求められる。
(2) メンテナンスが必要
冷却装置の定期的な点検・メンテナンスが必要であり、故障すると貨物が損傷するリスクが高い。
(3) 積み込み・積み下ろし時の温度管理
扉を開けるたびに温度が上昇するため、迅速な積み込み・積み下ろしが求められる。
(4) 環境問題への対応
冷媒にフロンガスが使用されることが多いため、環境規制に対応したエコ冷媒の導入が進められている。また、電動冷凍車の開発も進んでいる。
まとめ
冷蔵車・冷凍車トラックは、食品や医薬品などの品質を維持しながら輸送するために不可欠な車両です。温度帯や冷却方式によって様々な種類があり、それぞれの用途に適した車両が選ばれています。一方で、燃料消費や環境問題などの課題もあり、今後は省エネ技術やエコ冷媒の活用がさらに進むことが期待されます。物流の効率化と環境負荷の低減を両立させることが、冷蔵・冷凍車業界の今後の課題となるでしょう。